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薄暗く陰鬱な森の中に、さらに気が滅入ってきそうな程の悪臭が立ち込めていた。
生臭い、鼻にこびり付くような嫌な臭い。
その殆どの原因は、息絶えた『怪物』たちから流れ出た血からである。

視界の中に動く『怪物』がいないことを確認すると、騎士長はふう、と張り詰めていた息を吐き出した。
「襲撃してきた敵はとりあえず片付いたようだ。各部隊長、安否確認!」
「第2部隊、死者0、負傷者2!特別部隊に適切な処置を要請します!!」
「第3部隊、死者0・・重症1、軽傷3!!特別部隊、重傷者への迅速な措置を要請致します!!」
「了解した。特別部隊、負傷者への処置を頼む」
「「御意!!」」

部下たちの報告を聞いたオリオンは、苦虫を噛み潰したような表情で俯いた。
(やはり、これだけの激しい戦闘下では怪我人は避けられなかったか・・・)


むしろここまで負傷者を抑えられたのは、日頃欠かさず鍛錬に打ち込んだ騎士たち自身のお陰であろう。

あとは多少の治療術と医術を習得している特別部隊に任せておけば、手負いの者たちへの心配はまずなくなる。
処置に時間が掛かるから、先に第2部隊を連れて、エアルたち第1部隊に合流しておこうか。


「負傷者と特別部隊、それから第3部隊はここで待機、第2部隊と私は第1部隊に合流する。第2部隊、続け!」
「「「御意!!」」」

エアルたちが進んだ道へ歩みだそうとした瞬間、視界の隅に赤茶色の煙が映った。
それに少し遅れて、パァンという乾いた音が森の中に微かに響いた。

あれは、予め各部隊長に持たせておいた煙弾だ。
間違いない。

「騎士長、緊急招集の合図です!!おそらくエアルさ・・第1部隊が上げたのでしょう!」
「そうだな、バズ。急ぐぞ!」
「はっ!」


エアルたち第1部隊は、この部署の中でもトップの実力を持つ者たちが集められた精鋭部隊だ。
彼女たちに限って、全滅という道へ進んでしまうことはまずない。
それより、調査先でなにか進展があったと考える方が妥当だろう。

だが、余程のことがない限り赤い煙弾は上げないはずである。
調査の進展があった時には緑色の煙弾を上げるようにと伝えたのだが・・・。


(・・・嫌な空気だな)

灰色に曇ったように見える空と赤い煙へ交互に目をやりながら、オリオンは第1部隊の元へ急いだ。



「・・・っ、こ、んな・・ことが・・・」

部下の一人が背後で呆然と口にする。

普段滅多に無表情を崩さないサインでさえ、エアルの隣で驚きに目を見開いていた。

本来ならば部下に号令を出さなければならないのに、ただ無意識のうちに赤い煙弾を上げることしか出来なかった。

静まり返り、不気味に暗黒を張った洞窟。

エアルたちは、その洞窟に一歩踏み出した瞬間から立ち尽くしていた。

生物の気配はない。
動物が発する独特の敵意も感じない。

そこにあるのは死の臭いと、無念を訴える無言の視線だった。


エアルのすぐ足元に転がる死体。
赤黒く変色した血だまり。
それが無限の連鎖となり続いていく。
ずっと、ずっとずっと奥まで、岩穴が途切れるまで。


大丈夫ですかと、間抜けな声が出た。
無事なはずがない。
一応彼(容姿から察するに男だろう)の喉元に触れてみたが、冷たい感触を返してくるだけだった。
仰向けに倒れた死体がこちらを見ているような気がして、怖くて視線を逸らしてしまった。

今まで幾度となく死の現場に立ち会わせてきたが、これほどまでに凄惨な場面は見たことがない。
なんて・・なんて、惨たらしいのだろう。

「・・・捜索対象と思しき黒騎士たちを発見。これより、さらに詳しい状況確認へと、移行する」
掠れた弱々しい声を振り絞って号令をかけると、サインが一番に「・・・御意」と応答してくれた。
それに続き、我に返った部下たちが次々に応答していく。
何とか精神は保っていてくれるようで、ほっとした。


一人ずつ確認しながら進んでいくが、やはり息をしている者はいそうにない。

無理かと諦めかけたその時、微かだが呻き声が聞こえた、気がした。

はっと斜め後ろを振り返ると、少し年配の黒騎士が赤黒く染まった腹部を抑えながら苦しそうにもがいているではないか。

「生存者確認!!応急措置が出来る人はいない!?」
「部隊長、多少の道具は持参しておりますが・・ここまで酷い状態だと、効果があるかどうか・・!」
「特別部隊か、他の部隊の応援を待ち部署まで運ぶのが適策かと」
「・・・さっき、煙弾は上げたけど・・・」

手遅れになる前に到着してくれるかどうか。

焦燥感に苛まれながらぎゅっと手を握っていると、老騎士の腕が僅かに動いているのに気付いた。
飛びつくように彼に近付き彼の手の先を見ると、洞窟の奥を指差している。


そちらに目を向けた瞬間、どす黒いものがエアルの前に立ち塞がった。

ぐるぐると渦を巻いていて、それでいて実態の掴めない、影のような・・・。

寒い。
背筋が凍ったように硬い。
手が、いや全身が、震える。

こいつは、一体。


「・・・長、部隊長!!」

がくがくと乱暴に揺さぶられて、エアルははっとそちらを見た。
サインや他の部下たちが心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「どうかしたんですか?」
「え、あ、あれ・・・」

気が付いた時には、先程の影はもう見当たらなくなっていた。

今のは一体何だったのだろう。
ただの幻覚だったのか。

外から大声が聞こえた。
オリオンの声だ。

「エアル、無事か!」
「うん、私は大丈夫!重傷者を発見したから、急いで特別部隊を呼んで!!」
「それなら大丈夫だ、もうこちらへ向かうよう連絡してある。・・・それにしても」
オリオンは奥へ歩みを進める度に表情を苦いものへ変えていく。

「・・・一体、ここで何があったのか」

エアルはただ無言で、洞窟の奥を見つめるばかりだった。



続く
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【2013/06/23 21:47】 | オリジナル小説
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忌まわしい魔の叫びと、白い騎士の雄叫びが交差し、やがてぐちゃぐちゃに乱れていく。
先陣を切ったのは騎士長と第1部隊だった。

オリオンが、身の丈ほどもある大剣をやすやすと一閃させて、襲い来る怪鳥の群れを簡単に倒した。
そして、陸空戦どちらも得意とする第1部隊がそれをサポートする。
あの一番大きな怪鳥はオリオンを狙ってきているようなので、第1部隊は他の『怪物』たちを片付けるのが得策だろう。
エアルは軽い身のこなしを利用して跳躍し、近くに迫っていた怪鳥たちを2、3匹まとめて地に落とした。
叩きつけられ藻掻く怪鳥たちの根を、第2部隊の者が確実に止めた。
それに勢い付いて、他の部隊も次々と『怪物』たちを切り倒していく。
返り血がエアルの頬にこびり付く。
鮮血と脂で汚された剣を拭う暇もない。

再び、ぶおんと強風が襲ってきて、砂が目に入ってしまった。
どうやら一際大きな怪鳥が空中へ浮いたようだ。
片目だけ何とか開いた状態で目をやると、バズたち第2部隊が横をすり抜けていった。
そうか、エアルたちが『怪物』の相手をしている間に奥へ進むつもりなのか。

と思ったが、実はそうでもないらしい。
怪鳥の群れはだいぶ数が減ってきたものの、人間の匂いを嗅ぎ付けてか、他の『怪物』たちが集まってきていたのである。
それに気づいた第2部隊が、近付く獣人たちへと突撃していった。
さすがにこの数ではきりがない。

「エアル!」
怪鳥の相手をしたまま、エアルは背中越しにオリオンの声を聞いた。
「俺が道を開く、行け!」

なるほど、彼の大剣は流れを大きく変える鍵となるだろう。
その隙をついてエアルたち第1部隊が奥へ進んでしまえば良い、という考えなのか。

「召喚・・・」
オリオンがゆっくりと呟くと、彼の大きな得物がわずかに発光した。
動揺したのか、『怪物』たちの動きが鈍くなる。

「『獅子王の轟き(レオ・スリンダー)』!!」

そう言い終えるか終わらないか、オリオンの動きが一気に加速した。
まるで体重を感じさせない動きで大きく踏み込んだかと思うと、空中で横に一回転しながら剣を円状に回した。
その一撃で大きな怪鳥を切り殺すどころか、他の怪鳥まで巻き添えにしてしまった。
それだけでは止まらず、彼は姿勢を低くして走り出す。
目指すのは、第2部隊が相手している獣人たち。
並外れた身体能力で大きく跳躍すると、早口で彼の口から魔法が紡ぎだされる。

「『星の語り部(セコンド・グレイス)』」

オリオンは少しだけ体を前に傾けると、大剣を横薙ぎに払った。
同時に閃光が繰り出され、ドミノ倒しに獣人たちが倒れていった。

「第1部隊、進行方向へ直進!!私に続け!!」
「「御意!!」」
敵に隙が出来た所を狙って、第1部隊は『怪物』たちの間をすり抜け、直進した。
途中しつこく怪鳥が襲ってきたが、第1部隊だけで十分対処できた。

遠くから、オリオンや各部隊長の号令が響いてくる。
不安で振り向きそうになったが、それを堪えエアルは自分を励ました。

大丈夫だ、オリオンたちは皆戦い慣れている。
死ぬはずがない。


森の奥へ進んでいくと、狼の姿をした『怪物』が行く手を塞いでいた。
一匹だけだが、随分と大きな狼だ。
油断ならない。
「部隊長、総出撃しますか」
副部隊長であり副部署長でもある男、サイン・リーファがエアルに耳打ちしてきた。


この男はエアルに朝わざわざ報告に来てくれたのを例に、几帳面で真面目な男だ。
だから本来エアルが就かなければならない副部署長の座を、彼に譲った。


こちらを睨めつける狼を一瞥して、短時間で思考を巡らせる。

一匹だけということは強さに自信があるのだろう。
それに、狩りにも狼であるなら群れをなしていないというのも妙だ。
この『怪物』は、奥にある何かを守っている・・そんな気がした。
大人数で攻めるのは、あまり効率が良くない。

「ううん、私とサインだけで行く。他は私たちの援護!特に周囲を警戒して」
「御意」
「「御意!!」」
サインは無表情のまま、こちらに顔を向け頷いた。
エアルも頷き返し、敵をもう一度見る。
狼が、怒涛のごとく襲いかかってきた。
それに合わせ、サインの方が先に魔法を発動した。

「召喚・・『小さな天使(バードテクニカル)』」

彼はふわりと空中へ飛び、『怪物』の背後に回った。
予想通り、狼は瞬時に反応して一時停止し、逆方向へ体を向けた。
完全に敵の視界から消えた所で、エアルの剣が鈍く輝く。

「召喚・・『聖馬の角(スターライト・ペガサス)』!」

その瞬間、決して細くはないはずの剣が一筋の線となり、突き出された光が孤高の獣を貫いた。


エアルやオリオンたちが使った『召喚魔法』は、剣に召喚獣を擬態させ、自身や剣の能力を一時的に上げる魔法だ。
通常の魔法に比べ、威力が小さい上に一定時間しか使用できないが、魔力の消費が少ないので使いやすい。


的確に急所を突かれた『怪物』は、口から赤い血を吐き出しながら倒れ、やがて息絶えた。
それを見届けると、エアルは辺りを見回した。
「皆無事?」
「はい。この辺りに他の魔物の気配は感じられませんでした」
部下の一人が報告してきて、エアルはそっと息を吐き出す。
とりあえず、これで先には進めそうだ。
前へ一歩歩きだそうとして、ふと脇の小道に目をやった。

獣道のように狭く暗い、深淵の奥。
どす黒い、闇のようなものを感じた。

思わずエアルの背筋がぞくりと粟立つ。

「部隊長、どうかしましたか」
サインや他の白騎士たちが不安そうに覗き込んでくるので我に返り、部隊に号令をかける。
「進路変更!あの奥を調査する!」



続く

【2013/04/08 17:21】 | オリジナル小説
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LandM
この世界観の騎士は召喚ができるのが独特ですよね。あまりない発想ですよね。この辺は召喚されるものと契約して初めて騎士と呼ばれると言う発想にもなるんですかね。とても面白い描写だと思います。

Re: タイトルなし
Rubellum
LandMさん、いつもご訪問ありがとうございます。

ありがとうございますー。
魔法剣士たちが何故召喚魔法を使うようになったのか、どうやって召喚獣を召喚するのか等の説明は後ほどの章で明かしていこうと思っておりますので、その時まで待っていてくださると嬉しいです。^^

コメントありがとうございました。

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集合場所の中庭に辿り着いてみると、ほとんどの人員が集まっていることが分かった。
白銀の騎士たちがびしっと整列し、かなりの数の列を作っている。

エアルも出来るだけ早く集合時間に着くよう心掛けてはいるのだが、なかなか成功できた試しがない。
やはり男と女では歩幅や歩く速さに違いが出てしまうのだろうか。
白騎士は圧倒的に女性が少ないので、男性の白騎士に遅れを取らぬようエアルも頑張っているのだが・・・。

少し憂鬱な気分で、第1部隊の最前列に並んだ。
周りを見渡すと、皆緊張した面持ちで自分の装備を確認したり、落ち着くために深呼吸をしたりと、最終準備に取りかかっていた。
ここへ来る前に準備は整えてあったが、念入りにもう一度チェックしていると、右隣から「エアルさん」と声をかけられた。
見ると、そこには深緑のショートヘアの青年が立っていた。

「バズ!」
「お久しぶりです」


少し照れたように頭を掻いた彼は、同期で1つ年下のバズだ。

彼は第2部隊の隊長で、同じ部隊長同士仲良くしてきたのだが、最近は第1部隊と第2部隊が別の仕事になることが多く、顔を合わせる機会が少なくなっていた。


彼と久しぶりに会話することができて、エアルの憂鬱感は少しだけ和らいだ。

「今日の任務は一緒なんだね」
「はい。今日はA級の任務だから、第1と第2部隊が共に行動するんでしょうね」

A級。
その言葉を聞いて、エアルの表情が引き締まる。


一口に任務といっても、その内容や危険性はてんで違う。
そのため任務の内容によって、仕事は3つにランク分けされる。

まず、C級。
軽犯罪や暴力団の鎮圧など、比較的新人でも扱いやすい仕事である。

その次にB級。
こちらは『怪物(モンスター)』の駆除や調査などの仕事が多いので、ある程度腕の立つ者か場数を踏んだ者でないと起用されない。

そして一番危険なのがA級。
魔法剣士同士の抗争の仲裁、危険視されている強力な『怪物』の討伐などが主な仕事だ。
ほとんどの場合、これには騎士長か剣士長が同行する。


今回の任務はそのA級だ。
エアルですら、A級の任務へ赴くのは数える程でしかない。

「・・・皆、緊張していますね」
「バズは平気なの?」
「ええ、まあ。A級は2回目ですし、今回が初めての連中に比べたらましですね」
「そっか・・・」
2回目で慣れてしまうなんて、大した精神力だ。
正直、羨ましい。
「・・・お互い頑張ろうね」
「はい!」
互いを励まし合っていた所で、遠くから号令がかかった。
騎士たちが一斉に隊列を整え直し、気をつけの姿勢になる。
そして騎士たちが見守る中、1人の青年が堂々と皆の前に立った。

肌に伝わってくる威圧感と、気高く誇り高い志。

白騎士たちの肌が、髪が、唇が、耳が、感覚全てが、びりびりと震えるほどの。

オリオン・ヴィアズが、短く切りそろえたブラウンの髪を風になびかせ、琥珀色の強い瞳で皆を見据えた。

「それではこれから、任務について詳しく説明する」
がしゃり、と鎧が動いた。
オリオンは東の方角を指差す。
「まず、目的地はこの街の東にある『影の森』だ。皆も知っている通り、あそこは『黒騎士』の担当する区域なのだが・・・」
『黒騎士』という単語に辺りは一瞬ざわついた。


黒騎士は白騎士と敵対する『闇』の剣士だ。
実際、部署同士が近い場所にありながら交流はほとんどなかった。


「・・・どうも黒騎士たちが任務中に行方不明になったらしい。その任務というのが、『影の森』に巣食うという強力な『怪物』が最近活発だから偵察をするという内容だった。黒騎士たちの行方不明と『怪物』の活発化には深い関連性があると判断したので、我々白騎士が調査を行うことになった。調査内容は『怪物』の様子と、黒騎士たちの安否の確認だけだ。ただし、あの森には強力な『怪物』たちが五万といるから、十二分に覚悟して進むように」

「「「「御意!!」」」」
騎士たちはびしりと敬礼をすると、各部隊長の指示に従い部署を後にした。


つまりは黒騎士の尻拭いですよ、というバズの言葉が脳裏に蘇った。
あの青年は黒騎士が心底嫌いらしく、「黒騎士」という言葉を聞く度に不機嫌になるから困りものだ。
愚痴や陰口を聞かされるのは、拒絶はしないが、好きじゃない。

自分まで嫌な気分になりながら、エアルはオリオンに続き『影の森』に分け入った。

その名の通り、この森は昼間でもあたりは暗い。
高くて幅の広い樹木が多いせいだろう、日差しがほとんど当たらないのだ。
しかも、木々は全て黒く変色してしまっている。
100年くらい前まではこんなことはなかったそうだが、『怪物』たちが住み着くようになってからというものの、この森の状態は悪くなる一方なのだという。
『怪物』たちを倒せれば話は別なのだが、数が多すぎてきりがない。
不気味な森だ。

それに何より、異様な気配がする。
背筋を走る悪寒が先程から止まらない。
辺りを警戒しながら進んでいると、後方から叫び声が上がった。

「『怪物』の奴らだ!!」
「上を警戒しろ!!」

エアルも、前を歩いていたオリオンも、他の白騎士たちも一斉に上空を仰ぎ見る。

巨大な黒い怪鳥がエアルたちを睨めつけながら上空を覆っていた。
それだけではない、怪鳥の仲間であろう一回り小さな鳥たちがいつの間にか木々に止まり、白騎士を包囲していた。

「攻撃準備!!」
「「「「御意!!」」」」
オリオンの号令に、騎士たちは各々剣を構えた。

エアルも素早く鞘から剣を取り出す。
決して小振りではないが、女性のエアルにも持ちやすい軽くて丈夫な剣だ。
これが、私の相棒。

白騎士たちが解き放った銀色の光に反応してか、『怪物』たちが一斉に襲い掛かってきた。
再びオリオンの号令が響く。
「全部隊、攻撃開始!!」



続く

【2013/03/10 21:59】 | オリジナル小説
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LandM
それでもエアルはA級の仕事をやっているときもあるのは優秀な証拠なんでしょうね。俗にモンスターハンターみたいなお仕事になってくるんでしょうね。分野が違いますけど悪魔狩りもこの類に入りそうですね。もとより、聖堂騎士はその類の仕事が多かったですけどね。

Re: タイトルなし
Rubellum
LandMさん、コメントありがとうございます。

エアルは仮にも部隊長をやっているんですから強い筈なのですが、本人は色々あって自分にコンプレックスを持ってしまっているようです。

そうですね、ほとんど悪魔狩りに近いと思います。
この世界の人々にとって『怪物』=悪のようなイメージがあるので…。

ご訪問ありがとうございました!

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この世界には、魔法剣士というものが存在する。

魔法剣士とは、様々な形状の剣に多種多様な魔法を宿らせ、剣や己の能力を増幅させながら戦う者のことだ。
その魔法には大きく分けて6つの属性がある。
光、闇、水、炎、風、土。
この6属性は、自然界の中で最も重要な役割を持つ力が魔法として具現化したものだ。
属性が違えばその能力の特徴は大きく異なり、それを上手く活かしながら魔法剣士は少しずつ力を伸ばしていった。

かつて、魔法剣士は王や教皇に値する程の神聖な存在で、人々から畏怖と尊敬の眼差しを受けていたのだという。
魔法剣士にさえなれば、将来の希望と富は約束されたようなものだった。

しかし、銃の登場で流れは大きく変わった。

大量生産できる銃と比べ、魔法剣士を雇うには膨大なコストがかかる。
戦場で、銃は魔法剣士の力とほぼ同等の威力を発揮するため、必然的に魔法剣士たちは仕事を失った。
それに拍車をかけるように民主主義や平和主義が世の中を動かし、戦争自体が世界から無くなっていった。
次第に活躍の場を無くしていった魔法剣士は、現在では多くの国で『流れ者』というイメージが強い。

だが、その例外として『カトレア国』がある。

この国は今でも魔法剣士を国が雇い、国内の治安を保護させている。
他国で言うところの『警察』のような立場だ。
国も民主主義となった今、権力を持って政治を動かすのは政府であり、崇められるような存在ではなくなったが、魔法剣士は今なおこの国に深く息づいている。


そこまで読んだ所で、書物室の窓から滑り込んできた風が、ページをパラパラと捲った。

「・・・あ」
せっかく読んでいたのに、ページが捲られてしまったせいで、どこまで読んでいたか分からなくなってしまった。
すっかり様変わりしてしまった文章を見つめ、溜息をつきながら本棚へ向かう。
閉じられた渋い赤色の本は、狭い隙間に無理やり押し込められた。
彼女の蒼い双眸が、本の背表紙を映す。
『魔法剣士の歴史』。
本の背表紙にはそう記されている。
魔法剣士になったばかりの新米剣士が読むような、ごくごく初歩的な歴史書である。
昔の記憶を辿るように、文字の凹凸にそっと指を滑らせ、彼女は微笑んだ。

「エアル部隊長」
と、名前を呼ばれ、彼女は振り向く。
開きっぱなしの木製の扉の横に、白い鎧を纏った男が立っていた。
「今回の仕事は10時に集合です。あと20分程なので準備しておくように、と騎士長から命令です」
「分かった。わざわざありがとう」
「では、私はこれで失礼します」
きっちり45度腰を曲げ敬礼すると、どこか機械的な挨拶を残して男は去っていった。
彼は、エアルと呼ばれた少女の部下だ。


エアル・フィザー。

ホワイトツリー地区管轄部署、第1部隊を束ねる部隊長である。

彼女も部下の男も、同じ『光』の剣士・・もとい『白騎士』だ。
6属性の中で特に大きな要素を占める属性である『光』と『闇』の剣士は、別名で呼ばれることの方が多い。
それぞれ『白騎士』『黒騎士』と。
諸説あるが、世界を構成する『光』と『闇』を司る大きな役割を持っている為にこう呼ばれるようになったのではないか、という説が一番有力だ。

その白騎士に属し、しかも部隊長を任されているのだから、エアルにはいつもプレッシャーが重くのしかかっている。
日々訓練は欠かさず行っているが、あまり伸びない実力に焦りを感じる今日この頃である。


「・・・さて、そろそろ広間に行ってみるかな」
書物室から出て扉を占めた時、廊下の向こうから大柄な人影が見えた。
思わず大声で相手の名前を叫びそうになったが、仮にもここは白騎士の詰所である。
非常時以外に廊下で大声を出すことは禁じられていて、もしその掟を破れば即懺悔室行き、しかも先輩の騎士たちに目をつけられるという嬉しいオプション付きである。
相手の方もエアルに気付いたようで、ある程度距離が近づいたところで声をかけてきた。

「エアル、これから広間に行くのか」
「うん。オリオンも?」
「ああ、集合時間が近いからな」


親しげに声をかけてきた青年こそが、白騎士長のオリオン・ヴィアズだ。

17歳という若さで白騎士長に就任し、それ以来白騎士たちを束ねてきた切れ者である。
淡々としているように見えて意外と人情深いため、部下たちに厚く慕われている。

彼は、幼い頃からエアルとともに鍛錬を重ねてきた唯一無二の友でもある。
本来なら『白騎士長』と呼ぶべきだろうが、あえて親しみを込めて『オリオン』と呼び捨てで呼んでいる。
それを許してしまう所が彼らしい。


廊下を歩きながら、エアルは今回の仕事について聞いてみることにした。
「今日の仕事は、裏の森だよね」
「ああ、近隣の住民から通報があった。詳しくは集合してから皆にも話す」
時間が押していて急いでいるのか、オリオンは早口に応えた。

裏の森はこの部署の管轄外だ。
何か不穏なものを感じたが、エアルは黙って集合場所に急いだ。

歩幅の大きさではやはりかなわないので、エアルがオリオンの一歩後ろを歩く形となる。
いつかその背中と並んでみたいな、と思いながら、エアルは金属鎧が擦れ合う音を聞いていた。



続く

【2013/02/27 19:22】 | オリジナル小説
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LandM
おお、エアル登場ですね。
エアルのキャラクター性は個人的に好きなんですよね。私は。聖堂騎士に近いところがたまらなく良いです。

Re: タイトルなし
Rubellum
LandMさん、コメントありがとうございます。

あれだけ影が薄かったエアルを気に入って頂けるとは・・・(笑
改訂版では頑張って主人公の良さを引き立てようと思っております。

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私は負傷者を癒したり、病気の者の為に薬草を処方したりする仕事に携わっている。
そう、一言で言えば医師だ。


激しい雨と、窓を割らんばかりの豪風が吹き荒れる、とある嵐の夜である。
私はいつも通り、患者のカルテの整理をしたりその日の帳簿をつけたりしていた。

炎のように揺らめきながら、ランプの中で蛍石が光る。
吊り下げられたランプの下で、書類にペンを走らせながらちらりと時計を見た。
(・・・もうこんな時間か)
短い針がローマ数字の2を指そうとしている。
そろそろ寝る時間だ。
私はペンを机の上に放り投げ、思い切り伸びをした。
最近寝不足のせいか、どうも体が重い。
さすがにもう急患は来ないだろうし、今日はこれで閉めて寝よう。

そう思っていた矢先、木製の簡素な扉が、ドンドンドンと激しく叩かれた。

あのドアは、先代から譲り受けた時から一度も修理していない年代物だから、優しくノックして欲しいのだが。
くだらないことを考えながら、扉を開けようと玄関へ向かう。
扉の叩き方から察するに、急患だろう。
崖から足を滑らせでもしたのか。

「今開けまーす」
またしても激しいノックをされたので、大きな声で返事をしてから扉を開けた。

そこには、小さな子供がたっていた。

所々焦げ、ボロボロになった衣服。

煤と血で汚れた顔。

・・・多分、崖から落ちただけではこんな状態にはならないだろう。
幼さのせいか、それとも汚れているせいか、顔立ちだけでは男か女か区別がつかない。
背中には、大きな革袋が背負われている。
この年頃の子供が持つにしては随分大きな荷物だ。

「どうかしたの」
私が訊ねると、子供は死んだような虚ろな瞳で私を見上げた。

「治療を、お願いします」

ただその一言だけを呟いて。



第1話へ続く


【2013/02/09 23:24】 | オリジナル小説
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LandM
お、入りが違いますね。
文章力も上がっているような気がします。
こういう表現は私には出来ないんですよね。
ランプの描写とかは。。。
こういう描写が出来る方がうらやましいですね。

Re: タイトルなし
Rubellum
LandMさん、コメントありがとうございます。

改訂前、第1章だけプロローグ・エピローグがなかったので、改訂版では書いてみることにしました。

まだまだ拙い文章ですが、以前よりは成長できているようで安心いたしました。
もっと上手く情景描写ができるようになりたいですね・・・

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