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あの日の事は、今でも鮮明に覚えている。


「ジーク!」
たった1人の兄の名前を呼び、彼の側に駆け寄る。

ジークレインが兄で、俺が弟のジェラール。

兄と言っても、俺達は双子だ。
背丈はほとんど同じくらいで、顔もコピーしたかのように瓜二つ。

父親は俺達が生まれる前に死に、母親は俺達を生んですぐに死んだ。
ずっと、ずっと2人で暮らしてきた。

もちろん、2人だけで生活できる筈はない。
王宮の召使い達が色々と世話を焼いてくれた。
王族の息子で本当に良かったと思う。

ついこの間、後継者は双子の兄のジークレインに決まった。
双子とはいえ、兄は兄。
後継者に選ばれるのは当たり前の事だ。
だから俺は、別にその事で兄を恨んだり、妬んだりはしなかった。

ただ1つ、困った事があった。

「ジーク、何読んでんの?」
屈みこんでジークレインの手元を見ると、彼はジェラールに向かって笑顔を向けただけで、また本に視線を戻してしまう。
ジェラールは少しむっとした。

困った事とは、これの事だ。

ジークレインは勉強に追われ、俺に構ってくれなくなった。

ジェラールは自分の感情を抑え、しばらくジークレインの隣に座っていた。
が、彼は自分に見向きもしない。
ついに限界が来て、ジェラールはジークレインの腹を軽く小突いた。
「痛っ」
小さく呻き、やっとこちらを向いてくれる兄。
その行動が、余計にジェラールを苛立たせた。

ジークレインは、俺の事なんかどうでも良いんだ。

自分の事しか頭に無い。

「もう、ジークの事なんか知らないからな!」
足を踏み鳴らして、ジークレインのもとを去っていく。
「あ、おいジェラール・・・」
慌ててジェラールを止めようとしたジークレインの言葉が、唐突に途切れた。
ふと後ろを振り返ると、先程までいた場所に彼はいなかった。
「・・・ジーク!?」
代わりに、ジークレインは何者かに捕まっていた。

体格の大きい、知らない男だ。
黒いフードを被っていて、顔は見えない。

「ジーク!」
「ジェラール!」
ジークレインは必死に助けを求めたが、男は彼の口に布のような物を押し付けた。
薬が染み込んだ布だったらしく、ジークレインは意識を失ってしまう。
「ジーク!しっかりしろ!!」
男の足にしがみ付いて彼を救出しようと試みるが、男はびくともしなかった。
「ジークを離・・もがっ」
今度は、自分の口元にも何かが押し付けられる。

やられた、とジェラールは思った。
この場には2人の男がいて、ジェラールも狙っていたのだ。

つーんとした鋭い臭いを嗅いでしまい、途端に頭がぐらりと揺れる。
その隙に男はジェラールを抱え、何かの上に乗せた。
霞んだ視界の中、ジェラールは必死に兄の姿を探す。
彼は、男に連れ去られていた。
助けようとしても、身体が全く動かない。
「ジー・・ク・・・」
自然に涙が零れる。

男達は何が目的なのか知らないが、ジークレインを救えなかった。

それだけが悔しかった。

これが、俺達の運命が引き裂かれた日。

いつの間にか、君は王子に・・そして俺は召使いになっていた。


数年後、ルシフェニア王国の王宮の外れ。
ルシフェニア王国というのは、俺達が元々住んでいた王国。

双子の兄・・ジークレインが統治する王国。
・・・いや、統治と言うより支配と言った方が正しい。

彼は国民から食料や財産を奪い取り、彼に逆らった者達を皆殺しにする・・それを繰り返していた。
もはや、優しかった昔の面影は無い。

対してジェラールは、王宮の召使いという何とも質素な生活を送っていた。
正直、ジークレインが恨めしい。

だけど、自分は今度こそジークレインを守る・・そう決意した。
復讐なんてしない。

悪いのは全部、あの時自分や兄を攫った男達。
自分達の都合で俺達を引き裂いた、無責任な大人達。

ジークレイン・・王子に頼まれて、ジェラールは食料庫へ今日のお茶菓子を取りに行っていた。
王子はおやつの時間が好きだし、テレビも好きだ。
もっとも、貧しい生活を送っている国民達には、テレビなんて手の届く筈も無いが。

その時、食料庫の側に身を潜めている不審人物に気が付いた。
(まさか、例のテロ集団か?)

王族や貴族に反感を持ち、暗殺を行うテロ集団。
集団の名前は不明だが、特にルシフェニアの王族を狙っているのは確かだ。

「・・・何だ、貴様は」
近付くと、その人物は警戒心を強める。
「それはこっちの台詞だ。このルシフェニアの王宮に、許可無く入場する事は禁じられている。今すぐ出て行かないと、お前の首が飛ぶぞ」
首が飛ぶ、というのは、『処刑される』という意味だ。
「うるさい!・・・上の者に報告されても面倒だし・・まずはお前からだ!!」
言い終えないうちに、男(らしい)は短剣を振り上げる。
ジェラールは素早くそれを避け、腰に携帯しておいた剣で男の胸を斬った。
「なっ・・!?」
男が驚き戸惑った隙に、急所へ剣を斬り込む。
悲鳴を上げる暇無く、男は倒れた。
即死だった。
「・・・・・」
ジェラールは無言で血のこびり付いた剣を布で拭き、鞘にしまう。
男の死体を草むらの中に隠すと、何事も無かったように歩き出した。
一瞬だけ、死体の方を振り返る。

「・・・・ジークは、俺が守る」

君を守る、その為ならば・・・

俺は悪にだってなってやる。



続く
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【2011/05/21 18:11】 | FT二次小説
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