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もう外は薄暗い。
いくら夏だと言っても、秋に近付いてきた最近は暗くなるのが早くなってきた。

今日は珍しく静かな事務所。
絶え間なく聞こえていたキーボードの打鍵音が唐突に止み、代わりに少しの間だけマウスでクリックする音が響く。
その音さえも聞こえなくなった時、彼女が何時間かぶりに口を開いた。

「あー、終わったー!」
大きな伸びをして時計を見ると、その針はちょうど7時をさしていた。
(今日の仕事は早く終わったなぁ・・・)
内心そう思いながら、今自分が座っている椅子を別方向に回す。
彼女の視線の先には誰もいなかった。
「あれ・・?おかしいなぁ、さっきまでアザゼルさん達がいた筈なのに・・・」
首を傾げて椅子から腰を上げた瞬間、足元から声が聞こえた。

「驚いた?なぁ、さくちゃん驚いた?」
さくちゃんと呼ばれた彼女の右足にしがみ付いた物体を見もせず、そのまま右足で軽く蹴ってやると、「むぎゃ」と小さく悲鳴を上げて物体が離れた。

彼女の名前は佐隈りん子。
この探偵事務所で事務の仕事をする傍ら、探偵助手としての仕事もこなしている。

今日は依頼も無く、事務の仕事も少ない方だった。

「アザゼル君、君は本当にお馬鹿ですねぇ。そんな事してもさくまさんに踏み潰されるのが精々だって、いい加減学習したらどうですか」
「べーやんやって、面白がって隠れてたやんか!」

ぎゃあぎゃあとくだらない言い争いを始めたこの2匹は、佐隈が契約している悪魔達だ。
先程佐隈の足元にいたのが淫奔の悪魔であるアザゼルで、もう片方が暴露の職能を持つベルゼブブ。
いつも佐隈の仕事を邪魔してきたりするのに(特にアザゼルが)、今日は静かだったのはただ単に寝ていたからだろう。

「動いたら何か腹減ったわぁ。さく、早く飯作れや」
「カレーじゃなかったらぶっ殺すぞクソ女」
「はいはい、分かってますって。・・・そういえば、アクタベさんはまだ帰って来ないんですか?」
事務所を見渡したが、彼の姿は無い。
「さくがパソコンいじってエロ動画観てた頃からいないで~。熱中しすぎて気付かなかったんちゃうか?」
にやにやと気味悪い笑みを浮かべるアザゼル。
「観てませんから」
佐隈は何処からともなくグリモアを取り出し、それを無表情のままアザゼルの頭に突き刺した。
「痛っ、いだだだだだだ!!も、もう勘弁、許し・・!いだだっ!!」
グリモアで何度も頭を貫かれ、アザゼルは痛みで床を転げまわりながら許しを請うた。
彼が部屋の隅に蹲って完全防御体制に入った頃、佐隈はようやく攻撃をやめる。

(この女ァ・・やはりアクタベ氏に似てきたな・・・)
(何でこんな事でぶちぎれるんや・・・)

頭の中では違う事を考えていた悪魔2匹だったが、表情は同じで怯えたような顔をしていた。

「アクタベさん、いつ頃帰ってくるんでしょうね」
「さぁ」
「あ、あのー・・晩飯作ってくださいませんかぁ、さくまさーん・・・」
自分の要求が完全に忘れられている事に気が付いたアザゼルが、消え入りそうな声でもう一度要求する。
佐隈は、仕方ないなという顔で台所へと向かった。
(あ、今日買い物してなかったけど・・カレーの材料あるかな・・・)
ふとそう思い、冷蔵庫の扉を開けた時だった。

「ああああああっ!!」

台所へ向かった筈の佐隈の口から思わず絶叫が漏れ、悪魔達が何事かと駆けつける。
「さくまさん、どうしました?」
「どうしたんか、さく!!」
「・・・・無くなってる・・・」
「「?」」
「私の作ったお菓子が、無くなってる!!」
しばらくの沈黙の後、アザゼルとベルゼブブは顔を見合わせた。
「お菓子?」
「何の事や?」
反応はいかにも関心がないように見せているが、2匹は明らかに不敵な笑みを浮かべていた。
「とぼけないでください!!私は朝、確かにこの中にお菓子を入れたんです!アクタベさんは私が見てた限りここには近付いてない筈だし・・アザゼルさんとベルゼブブさんの他に、あと誰がいるって言うんですか!!」
「だから、ほんま知らんって」
「手作りのお菓子なんて知りませんよ」
「・・・うぅ・・徹夜して作ったのに・・ひどいですよ・・・」
最近の佐隈にしては珍しく、しょんぼりと肩を落とす。
そんな彼女を慰めるように、2匹は佐隈の肩をぽんぽんと叩いた。
「まぁ、当然の報いです。菓子作りなんてしてる暇があったら、グリモアの勉強なり大学の勉強なりしろって事ですよ」
「そうそう。大体、あんなへぼいゼリーいつでも作れ・・はっ!」
「・・・馬鹿が・・」
口を滑らせ余計な事を言ってしまったアザゼルを佐隈は思い切り睨んだ。
アザゼルの横ではベルゼブブが彼の腹を突く。
「・・・・やっぱり、アザゼルさん達だったんですね・・・」
「い、いや、わざとじゃないんや!ま、まさか手作りだとは思・・」
「そういう問題じゃないですよ」
「さくまさん、誤解しているようですがね。私は断じてやってな・・」
「ベルゼブブさん、苦しい言い逃れはやめましょうか」
「・・・・・」
じりじりと2匹に近付く佐隈。

その時、事務所の扉が唐突に開かれた。
「あ、アクタベさん。お帰りなさい」
何事も無かったかのように、佐隈は帰ってきた芥辺の方へ向かっていく。
悪魔達はほっと胸を撫で下ろす。
今だけは、あの極悪非道な芥辺が救世主のように思えた。
「ただいま、さくまさん」
「もー、聞いてくださいよアクタベさん!アザゼルさん達が、私の作ったゼリー食べちゃっ・・」
溜まった鬱憤を晴らそうとして開いた口が止まる。

彼女の視線は、芥辺の口元に向けられていた。

「・・・・あの・・アクタベさん」
「何」
「その・・間違っていたら失礼なんですけど」
「うん」
「・・・もしかして、私のゼリー・・食べました?」
「!?」
驚いたアザゼルが芥辺達の元へ飛んでいき、それを確認する。

芥辺の口元には間違いなく、ゼリーの欠片と思しき透明な物体が付いていた。

「え!?何で!?わいは確かにゼリー食ったんやで!?」
「そうですよね、アザゼルさん達が食べたんですよね?どうしてアクタベさんが・・・」
「・・・なるほど、そういう事ですか」
意味ありげに呟いたのは、佐隈達の後ろで黙って様子を見ていたベルゼブブだった。
「どういう意味や、ベーやん」
「アザゼル君がゼリーを半分食べて私に渡した後、実は私・・ゼリーを4分の1くらい残したんですよね。別に美味くもないゼリーだったので、残しておいたらアザゼル君あたりが後で食べるだろうと思って。それをアクタベ氏が見つけて食べたんでしょうね」
「・・・そうなんですか、アクタベさん?」
「まぁそうだな」
あっさりと認める芥辺。
佐隈は意外そうな目で彼を見つめた。
「どうかしたのか、さくまさん」
「あ、いえ・・その、ゼリー美味しかったですか?」

「美味しかった。ありがとう」

その瞬間、芥辺が少しだけ笑った気がした。
あくまでも気がしただけだ。
実際に表情には出していないだろう。

でも、佐隈は彼の言葉が嬉しくて、密かに微笑んだ。
「良かったら、また作りましょうか」
「別にどっちでも良い」
「無理して作らなくても良いで」
「てかその前にカレー作れよ」
「分かりましたよ・・もう」
苦笑しながら、佐隈は今度こそカレーの材料を取り出した。
幸い材料は揃っていたようだ。

「あ、そうだアクタベさん」
「何」
「今度ゼリー食べたい時は、ちゃんと私に断ってから食べてくださいね!そりゃ食べてくれるのは嬉しいですけど、急に無くなったら困るんですから」

芥辺は、返事の代わりに唇の横に付いたゼリーの欠片を指で拭った。



終わり
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【2011/07/09 21:40】 | よんアザ二次小説
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