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薄暗く陰鬱な森の中に、さらに気が滅入ってきそうな程の悪臭が立ち込めていた。
生臭い、鼻にこびり付くような嫌な臭い。
その殆どの原因は、息絶えた『怪物』たちから流れ出た血からである。

視界の中に動く『怪物』がいないことを確認すると、騎士長はふう、と張り詰めていた息を吐き出した。
「襲撃してきた敵はとりあえず片付いたようだ。各部隊長、安否確認!」
「第2部隊、死者0、負傷者2!特別部隊に適切な処置を要請します!!」
「第3部隊、死者0・・重症1、軽傷3!!特別部隊、重傷者への迅速な措置を要請致します!!」
「了解した。特別部隊、負傷者への処置を頼む」
「「御意!!」」

部下たちの報告を聞いたオリオンは、苦虫を噛み潰したような表情で俯いた。
(やはり、これだけの激しい戦闘下では怪我人は避けられなかったか・・・)


むしろここまで負傷者を抑えられたのは、日頃欠かさず鍛錬に打ち込んだ騎士たち自身のお陰であろう。

あとは多少の治療術と医術を習得している特別部隊に任せておけば、手負いの者たちへの心配はまずなくなる。
処置に時間が掛かるから、先に第2部隊を連れて、エアルたち第1部隊に合流しておこうか。


「負傷者と特別部隊、それから第3部隊はここで待機、第2部隊と私は第1部隊に合流する。第2部隊、続け!」
「「「御意!!」」」

エアルたちが進んだ道へ歩みだそうとした瞬間、視界の隅に赤茶色の煙が映った。
それに少し遅れて、パァンという乾いた音が森の中に微かに響いた。

あれは、予め各部隊長に持たせておいた煙弾だ。
間違いない。

「騎士長、緊急招集の合図です!!おそらくエアルさ・・第1部隊が上げたのでしょう!」
「そうだな、バズ。急ぐぞ!」
「はっ!」


エアルたち第1部隊は、この部署の中でもトップの実力を持つ者たちが集められた精鋭部隊だ。
彼女たちに限って、全滅という道へ進んでしまうことはまずない。
それより、調査先でなにか進展があったと考える方が妥当だろう。

だが、余程のことがない限り赤い煙弾は上げないはずである。
調査の進展があった時には緑色の煙弾を上げるようにと伝えたのだが・・・。


(・・・嫌な空気だな)

灰色に曇ったように見える空と赤い煙へ交互に目をやりながら、オリオンは第1部隊の元へ急いだ。



「・・・っ、こ、んな・・ことが・・・」

部下の一人が背後で呆然と口にする。

普段滅多に無表情を崩さないサインでさえ、エアルの隣で驚きに目を見開いていた。

本来ならば部下に号令を出さなければならないのに、ただ無意識のうちに赤い煙弾を上げることしか出来なかった。

静まり返り、不気味に暗黒を張った洞窟。

エアルたちは、その洞窟に一歩踏み出した瞬間から立ち尽くしていた。

生物の気配はない。
動物が発する独特の敵意も感じない。

そこにあるのは死の臭いと、無念を訴える無言の視線だった。


エアルのすぐ足元に転がる死体。
赤黒く変色した血だまり。
それが無限の連鎖となり続いていく。
ずっと、ずっとずっと奥まで、岩穴が途切れるまで。


大丈夫ですかと、間抜けな声が出た。
無事なはずがない。
一応彼(容姿から察するに男だろう)の喉元に触れてみたが、冷たい感触を返してくるだけだった。
仰向けに倒れた死体がこちらを見ているような気がして、怖くて視線を逸らしてしまった。

今まで幾度となく死の現場に立ち会わせてきたが、これほどまでに凄惨な場面は見たことがない。
なんて・・なんて、惨たらしいのだろう。

「・・・捜索対象と思しき黒騎士たちを発見。これより、さらに詳しい状況確認へと、移行する」
掠れた弱々しい声を振り絞って号令をかけると、サインが一番に「・・・御意」と応答してくれた。
それに続き、我に返った部下たちが次々に応答していく。
何とか精神は保っていてくれるようで、ほっとした。


一人ずつ確認しながら進んでいくが、やはり息をしている者はいそうにない。

無理かと諦めかけたその時、微かだが呻き声が聞こえた、気がした。

はっと斜め後ろを振り返ると、少し年配の黒騎士が赤黒く染まった腹部を抑えながら苦しそうにもがいているではないか。

「生存者確認!!応急措置が出来る人はいない!?」
「部隊長、多少の道具は持参しておりますが・・ここまで酷い状態だと、効果があるかどうか・・!」
「特別部隊か、他の部隊の応援を待ち部署まで運ぶのが適策かと」
「・・・さっき、煙弾は上げたけど・・・」

手遅れになる前に到着してくれるかどうか。

焦燥感に苛まれながらぎゅっと手を握っていると、老騎士の腕が僅かに動いているのに気付いた。
飛びつくように彼に近付き彼の手の先を見ると、洞窟の奥を指差している。


そちらに目を向けた瞬間、どす黒いものがエアルの前に立ち塞がった。

ぐるぐると渦を巻いていて、それでいて実態の掴めない、影のような・・・。

寒い。
背筋が凍ったように硬い。
手が、いや全身が、震える。

こいつは、一体。


「・・・長、部隊長!!」

がくがくと乱暴に揺さぶられて、エアルははっとそちらを見た。
サインや他の部下たちが心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「どうかしたんですか?」
「え、あ、あれ・・・」

気が付いた時には、先程の影はもう見当たらなくなっていた。

今のは一体何だったのだろう。
ただの幻覚だったのか。

外から大声が聞こえた。
オリオンの声だ。

「エアル、無事か!」
「うん、私は大丈夫!重傷者を発見したから、急いで特別部隊を呼んで!!」
「それなら大丈夫だ、もうこちらへ向かうよう連絡してある。・・・それにしても」
オリオンは奥へ歩みを進める度に表情を苦いものへ変えていく。

「・・・一体、ここで何があったのか」

エアルはただ無言で、洞窟の奥を見つめるばかりだった。



続く
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【2013/06/23 21:47】 | オリジナル小説
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