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今、季節は春。

王都アルフィタリアの隣にある『桜の関所』では、たくさんの人で賑わっている。
たまに、はしゃぎ過ぎて問題を起こし連行される者もいるが、無理もない。
桜の開花宣言が昨日出されたばかりなのだから。
通常なら一部を除いて人々が立ち寄らないこの場所は、今や人でごった返している。

・・・・静かで、気に入っていた場所だったのに。

少女は大きな溜め息をつき、『桜の関所』で一番小さい桜の木にもたれ掛かった。
いつもは一番大きな木の下で昼寝をしたりもするのだが、この人ごみの中ではそうもいくまい。
何故なら少女は、王都・・いや大陸では特別な存在なのだから。

王宮で一番高い地位に当たる、女王。
彼女は女王・アルテアだ。

その女王が何故こんな所にいるのかと言うと、・・・ただ単に気晴らしという理由だけだ。
王宮にいると疲れる。
張り詰めた空気の場所では、満足に休憩も取れない。
だからアルテアは、王宮の近くにあり人通りも少ないという好条件の、『桜の関所』にお忍びで来ているのだ。

しかし、この人の多さには参った。
折角人が少ないから休憩場所に選んだというのに、桜の開花の事をすっかり忘れて来てみたらこの有様だ。
これでは迂闊に歩き回る事さえ出来ない。
『桜の関所』で、少しだけ休んで別の場所に移動する事に決めた。

ちなみに今、アルテアはお忍び用の服を着ているが、周りの人々はもうアルテアの存在に気付いているだろう。
アルテアの事を気遣って、気付かない振りをしてくれているだけなのだ。
その事は彼女自身も分かっているので、このお忍び服を着る必要は無いはず・・・なのだが。
彼女がお忍び服を選んだのには、もう1つ理由があった。

これを着ていれば、またあの人に逢えるかもしれない。

という、個人的な理由だった。
いつも忙しそうに金色の髪を揺らしていたあの人を思い浮かべ、アルテアの頬が紅く染まる。
(・・・逢える訳、無いのに・・)

あの人は何処か遠い場所へ旅立ってしまった。

もう二度と逢えないかもしれないのに。

どうして、あの人の為に自分はこんな事をしているのだろう。

あの人は自分勝手すぎるのだ。
いつもいつも、1人で何処かへ行ってしまう。
(どうせなら、私も連れて行って欲しかった・・・)
そういう立場でないのは分かる。
が、あの人を思い出す度にそう感じてしまう。
アルテアは拳をぐっと握り締め、青空を仰いだ。


確か・・あの人と初めて逢ったのは、自分のペットを探している時だったな・・・。

眼鏡とお忍び服のフル装備で来たのに、ペットであるミーヤが暴走したお陰で、危うく自分の正体がばれる所だった。

あの人が捕まえてくれて、お礼にお茶に誘ったら断られてしまったっけ。
『茶は好きじゃない』・・あの人らしいと思った。


あの人と最後に逢ったのは、最後の戦いの夜。
元参謀長でありベアラーだったジュグランに捕まった自分を、助けに来てくれた。


もう、本当にあの人には逢えないのかな。
もう、あの人は死んでしまったのかな・・・。

そんな筈は無い、とアルテアは心の中で首を振る。
あの人はベアラーである以前に、生命力が強い。
少なくともアルテアはそう思っている。
だから、あの人はきっと私の前に現れてくれる。
きっと・・・。


「・・・・・様・・、アルテア様!」
女性の声が聞こえて、アルテアは慌てて飛び起きる。
どうやら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
「こんな所で寝て・・風邪を引きますよ、女王様?」
「す、すみません。ベル」
アルテアを起こしてくれたのはベルだった。
リルティ嫌いの1人である彼女が王都に来るなんて珍しい。
「・・・何か、立場が逆になってる気が・・まあ良いですけど。それより、ベルがここへ来るなんて珍しいですね」
「あっそうそう、聞いてくださいよ!すごい情報を手に入れちゃったんです!!」
「すごい、情報?」
「はい!実は、レイルがここに来たって言う・・・」
ベルの言葉が途中で切れ、アルテアに視線が向けられる。
「?」
ふと自分の腹部を見ると、見覚えのあるジャケットが置かれていた。

この厚みのあるジャケットは、レイルの物だ。

「・・・まさか・・そんな」
「じゃあ、あの情報は本当だったんだ!」
信じられないと言うように呟くアルテアと、ぱっと顔を輝かせたベル。
2人の表情は違っていたが、2人の瞳には涙が溢れていた。


『時計広場で待っている』。
しばらくしたある日、アルテアはそんな手紙をシドから受け取った。
わざわざ王都まで届けてくれたのだ。
「これ・・誰からでしょうかね」
不思議そうに便箋を覗き込むアルテアに、シドは苦笑いする。
「奴からの手紙に決まっとるじゃろ」
「・・・奴?」
「レイルじゃよ、レイル」
レイル。
懐かしい響きだ。
「ほれ、早く行ってくるとええ」
シドに無理やり背中を押され、アルテアはよろけながら『王都-草原駅』を後にする。
後ろを振り向くと、まだ駅にはシドがいて、アルテアに向かって手を振っていた。


「・・・・遅いですね」
時計広場に着き、しばらく待っていたアルテア。
だが、いくら待ってもレイルは来ない。
(待っているって、言ったのは貴方ですよ?)

まさか、またトラブルに巻き込まれたとか。
その可能性は高いかもしれない。
そういう人だから。

数分が経過した時、玄関ホールの方から何か騒がしい声が聞こえてきた。
護衛兵の怒声も混じっているようだ。
「あの、何かあったんですか?」
ちょうどホールから逃げてきた老人に尋ねると、しわくちゃの顔で息を切らしながら答えてくれた。
「・・・ベ、ベアラーが・・」
「え?」
「ベアラーが、急に暴れ・・だして、のう・・・」
老人はやっとそこまで言葉を紡ぐと、後ろに倒れて気絶してしまった。
よほどその出来事が恐ろしかったのか、それとも疲れてしまったのか。
(ベアラー・・・)

まさか・・トラブルに巻き込まれたのではなく、巻き込んでいるのではないか?

恐ろしい考えが浮かび、その考えを否定する事無くアルテアは走り出した。
途中にあった階段をもどかしく思いながら、玄関ホールに向かって急ぐ。
もし本当に巻き込んでいるのだとしたら、早く止めてあげないと。
あの人は、加減というものを知らないのだから。


「レイルー!!」
ホール中央にいた金髪の青年を見つけると、アルテアはさらに加速する。
そして、階段を下りる事などせず、突き出した柵を飛び越えた。
人々はそれを見て驚き、腰を抜かす者までいた。
だが、そんな事は気にしない。
アルテアはさらに仕込んであった太い棒を取り出し、金髪の青年に向かって思い切り投げつける。
青年は少々驚いたようだが、すぐに身構えて右手を差し出した。
直後に棒は軌道を変え、何処かに吹き飛んでいく。
人々はこれまたぽかんと口を開けてその様子を眺めていた。

「レイル、何やっているんですか!」
走り寄ったアルテアに青年はぽりぽりと頭をかく。
「いやあ・・つい癖で郵便モーグリにちょっかい出したら、急に近くにいた兵が怒り出して・・・」
「当たり前じゃないですか、罪も無い生き物に暴力を振るうなんて!」
レイルはその言葉を聞いて目を見開いた。
「・・・・あんた、何か変わったな」
「何がですか」
「前はもっとこう、控えめな感じだったのに。今はちょっと積極的になったというか、何と言うか・・・」
言葉を濁すレイルにアルテアは余計腹を立てたようだ。
「貴方も変わりましたね。前は、思った事を何でも言うような人だったのに」
「間接的に失礼な事言ってるな・・・」
「それはこちらの台詞です」
つんと澄ましたアルテアだったが、やがて無表情に戻ってベンチに腰掛けた。
レイルは立ったままでいる。

「・・・やっと、逢えましたね」
「だな。・・しばらく、心の整理がついていなかった」
軽く地面を蹴るレイル。
何か言いづらい事がある時の彼の癖である事を、アルテアは知っている。
「・・・・あんたらに、迷惑をかけるような気がしてたし」
「何を言ってるんですか!」
アルテアが急に飛び上がった為か、レイルはびくっと身体を仰け反らせる。
「私は、ずっと待ってたんです。貴方がもう一度帰って来てくれるのを。それなのに・・・」
「・・・ああ、すまなかったな」
レイルは目を閉じ、アルテアの方に身を寄せる。
今度はアルテアが驚く番だった。
「な、何を・・・」
「疲れてたのかもな」
「・・・・戦いに、ですか?」
「あと、日常に」
彼の口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。
言葉が悪いかもしれないが、いつでも日常をエンジョイしているような顔をしているように見える。
そして、レイルはアルテアの手をぎゅっと握った。

「あんたが、つらそうな顔してたからさ」
あんたがそんな顔してると、日常が嫌になってくるんだよ。

「・・・え」
「黙って行っちまって、本当にすまなかった」
下を向いていたので、レイルの表情は分からなかったが。
アルテアには何故か、涙を浮かべているように思えた。


「お茶、どうですか?」
「茶は好きじゃない」
あの時と同じ会話を交わし、2人で王都を出て行く。

2人の足は、桜の関所へと向かっていた。

「今度は、一緒に桜を見ましょうね」
「・・・ああ」



終わり
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【2011/04/04 21:47】 | FFCC二次小説
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